やみぞ杉・やみぞ桧・南部赤松
やみぞ杉 ― 落ち着きと気品を兼ね備えた美しさ
栃木県産の「八溝杉（やみぞすぎ）」は、全国でも一、二を争う良材として知られています。
原木の価値を決めるのは「素性」「目合い」「色合い」。
そのいずれにおいても八溝杉は高い評価を得ていますが、とりわけ素直な木目と澄んだ色合いにおいて、他の産地の杉にはない美しさを誇ります。
杉の赤身の色合いは、産地によって淡い赤から黒味を帯びたものまで幅広く存在します。その中で八溝杉は、赤身の色調が均一で、落ち着きと気品を兼ね備えた美しさを持っています。建材として用いたとき、空間全体に温もりと格調をもたらすのは、この「均一で美しい赤身」の賜物です。
また、八溝杉は適度な強度と軽さを兼ね備え、加工性にも優れています。大工職人や建築家からの信頼も厚く、構造材から造作材まで幅広く活用されてきました。長年にわたり培われた林業と製材の技術に支えられ、その魅力は今も受け継がれています。
益子林業では、この八溝杉の魅力を最大限に引き出すため、製材や乾燥の工程に徹底してこだわり、美しく、長く使える建材へと仕上げています。
自然の恵みと人の技が融合した「とちぎ八溝杉」。
それは、住まう人にやさしく寄り添い、時を経るほどに深みを増す日本の銘木です。
やみぞ桧 ― 赤身の美しさと均整の取れた木肌
栃木・茨城・福島の県境に連なる八溝山系。
八溝桧は水分の少ない山の尾根に近い場所に植えられています。これにより桧特有の病気にかからず健全に育ちます。
ここで育まれる八溝桧は、ゆっくりと年輪を重ね、緻密で美しい木目と芳醇な香りを持ちます。
その材質は、強度・耐久性ともに国内でも屈指。
伐採後さらに締まりを増すと言われ、適切に乾燥を施すことで、高い耐朽性を誇ります。
シロアリに強く、建築の土台材としても信頼されてきました。
歴史を遡れば、日光東照宮の建材にも用いられた八溝桧。
関東を代表する良材として、古くから材木業界で最高の評価を受けています。
赤身の美しさと均整の取れた木肌は、住まいに確かな安心と品格をもたらします。
益子林業は、この誇るべき八溝桧を、オリジナルブランド「千樹（せんじゅ）」の一材として選び抜きました。
なかでも「千樹・土台」には、樹齢60年以上、末口24cm以上の直材の丸太を用い、赤身のみを贅沢に使用。
硬度・耐久性・抗シロアリ性を備えた逸品として仕上げています。
「八溝桧 千樹」。それは、自然と時間が育んだ力強さと、匠の選別と製材技術が結実した、益子林業ならではの誇りです。
南部赤松 ― 自然の厳しさと恵み、そして職人の技が織りなす結晶
南部赤松との出会いは、私たちの製材の歴史を大きく変えるものでした。
地松での製材を始めて5、6年が経った頃、岩手県の山で目にした実生の南部赤松――赤身から目の積んだその材は、ただ美しいだけでなく、木としての素性の確かさを湛えていました。
実際に仕入れて製材してみると、目合いは驚くほど端正で、そこから生まれる造作材は、それまでのものを凌ぐ品質を誇りました。
この出会いが、現在多くのお客様にご愛用いただいている「南部赤松の床板」誕生の原点です。
南部赤松は伐採時期が限られ、2月までに一年分を仕入れなければなりません。
厳しい冬、雪の中で伐られる「寒切り材」は、目合いの美しさと堅牢さを兼ね備えた良材です。
南部赤松の乾燥は、杉や桧に比べると難しいとされていますが、時間と手間をかけることで、品質を保ち、且つ、節のある部位は床板に、無節の部位は玄関框や巾木へ。
一本の木から引き出せる価値を最大限に活かすのも、私たちのこだわりです。
そしてUNDER8の乾燥技術を南部赤松専用にアレンジし、節あり・節なしの床板を製造することで、他にはない品質を実現しました。
南部赤松の床板の殆どはエンドマッチ無しでご注文頂きます。
もちろん、エンドマッチ加工が標準ですが、加工の中で最もデリケートな工程がエンドマッチ加工であるため、この工程を省くことでコストダウンを図れます。
国産赤松をこの水準で仕上げられる工場は、今も当社以外は存在しないと自負しています。
南部赤松――それは、自然の厳しさと恵み、そして職人の技が織りなす結晶。
年月を経るほどに色艶を増し、住まいに風格と温もりをもたらす逸材です。
この唯一無二の材と歩み続けることこそ、私たちの誇りであり、ブランドの物語なのです。